下里有機の里づくり講演会「いのち(医農地)を繋ぐむらづくり」
■ 概要
開催地の下里地区は美しい田園風景が広がり、天皇杯の受賞をきっかけにこの美しい田園風景を残す機運が高まっている。また近年、有機の里として都市住民を農業体験等で受け入れた交流や、地元での有機農産物の周知活動などを行っている。今回はこのような「有機の里づくり」の一環として行われた。
この講演は、農業と医療の連携(医農連携)というテーマで有機農業や農産物が普段の生活を営むなかでいかに体や心の健康と関係しているかを地域の住人に知ってもらい、農地ばかりではなく里山という自然環境の保全活動を含めた有機の里づくりという活動が地域社会に意義あるものであることを身近な事例を交えて感じて戴ければという主旨で開催された。
■ 講演会詳細
1.挨拶と講師のご紹介
金子美登さんによる初めの挨拶と主旨説明
開会に当たり主催者である下里有機の里づくり協議会を代表してこの地域で永年有機農業を継続し普及推進してきた金子美登さんから開会の挨拶と今回の講演会の主旨の説明があった。
高橋優子さんが講師(佐久間哲也医師)の経歴の紹介を行った。
続いて高橋優子さんから講師である佐久間哲也医師の経歴の説明があった。佐久間医師は平成18年よりエムオーエー奥熱海クリニック(内科・心療内科・精神科)院長。通常の地域医療とともに、農場に隣接した豊かな自然環境を利用し、生活に即した健康法・養生法のアドバイスを行っている方である。
2.講演
講演内容の構成
テーマ:「いのち(医農地)を繋ぐむらづくり〜「分離の病」とその解決策〜」
現代社会に置けるさまざまな社会問題の根源には「分離の病」が原因として存在する。今回はこの分離の病とはなにか、そしてその対応法について具体的な事例を上げながら分かり易く説明する。
現代人は「分離の病」に置かされており、この問題へ対応するためには医農連携が重要
■「分離の病」とは
(1)人と食農の分離
- 食と健康の分離(欧米型食事で食べて不健康に)
- 食卓の分離(コケコッコ:弧食、欠食、個人個人バラバラ、固定(同じものばかり))
- 調理の分離(電子レンジでチンすることも調理)
- 食料生産地の分離(食料自給率の低下)
- 人と農の分離(一次産業が主だったころは農作業を手伝うのが当り前だった)
等の事例
(2)人と自然の分離
- 東洋思想では生きとし生けるもの全て尊重、西洋思想では人が自然を支配。
- 都市の無菌的環境で腸内の微生物環境が変わっている農薬による健康被害、環境汚染。いのちを殺していのちを守る?
- 土も野菜も人も健康そうでそうではない未病の状態
- 食料生産地の分離(食料自給率の低下)
(3)知と行の分離
- 医学は発達しているが医療費は増え、自殺者、鬱、生活習慣病、ニート、引きこもり等増加
- 窒素固定技術(化学肥料、火薬)はノーベル賞を受けたが健康被害を生んでいる
(4)自分との分離
- 自分の感情・気分をコントロールできない人、自殺者(学生・生徒)の増加、精神疾患・心の病の増加、子供の自傷行為の実態、将来に対する不安感(国際比較で最大)、発達障害・ADHD、境界型パーソナリティ障害の増加、イライラによる衝動的自殺、自分の取扱い説明書
(5)人と人の分離
- 子供の孤立(居場所がない、交流がない)、児童虐待、無縁社会
- 怒りによる分離(パワハラ、クレーマー、いじめ、ネット炎上、通り魔事件、土下座事件、ヘイトスピーチ、テロ・戦争までエスカレート)
(6)心と体の分離
- 西洋医学は臓器医学、体が危険を教えてくれない生活習慣病
■ ではどう対応するか → 分離の病への挑戦
大仁瑞泉郷の紹介
医農連携→いのち(医農地)を守る
(1)社会との協働
- ロハスからソハスへ(Lifestyles→Sosiety of Health & Sustainability)
- 健康中心の都市構想(土と人間の健康を守るまちづくり):健康産業、緑化・感k法保全、農医連携、健康医学、土と人の健康
- ハスを目指した協働
(2)医学の統合
- 大仁委員院長(沼田勇先生)、医は農に、農は自然に学べ(竹熊宜孝先生)、農薬被害の治療と有機農業の研究(柳瀬義亮医師)、ガンが消える・ガンに勝つ食事(済陽高穂医師)、長野県大塚貢校長
- 健康医学vs治療医学、統合医療(東欧医学・東洋医学・伝統医学)
(3)新しい人間観
- 心療内科
- 心療内科使う効果的な“くすり”:人ぐすり、時間ぐすり、環境くすり、自分くすり
- 自己暗示、五感を利用したリラクゼーション
(4)世界と自分の統合
- 自然農法、里山づくり
- 農業は七次産業化へ:六次産業(農林水産業の生産+加工+流通販売)にさらに、健康と癒し、環境保全、生きがいづくり、人づくり(食育、農業者育成)、人類史問題の解決など
■ 農医連携の今後の進め方(右図)
最後に佐久間先生から「小川町から日本へ、日本から世界へ いのちをつなげる活動を進めて下さい」と激励のお言葉がありました。
講演後の質疑応答
かぎられた時間ではありましたが、質疑応答の時間も設け場内からは、特に佐久間先生ご自身のことについて、「この道に進もうとしたキッカケは?」「自分自身の取扱説明書とはどのようにつくるのですか?」など講演の内容からさらに理解を深めたいという参加者の思いを感じることができました。
この講演会には高崎市や川崎市など遠方からわざわざお越し下さた方々もいらっしゃいました。今回は配布資料もなく、膨大な情報量ではありましたが、具体的な事例やウィットに富んだお話、そして何より佐久間先生のお人柄から溢れる笑顔でのお話に皆さん聞き入っていたようです。心と体の健康という誰にも共通の話題であることと現代病と言われる疾患や障害に悩まれているご本人や知人が多いということもあるのでしょうか、質疑応答後講演会が終了した後も先生に熱心にお話されている方もいらっしゃいました。
3.講演後のアンケート
講演後にアンケートの記入をお願いしました。50名の参加者のうち32名からの回答を得ることが出来ました。
質問項目と回答内容は以下の通りです。
Q:本日参加して如何でしたか
よかった(28名)どちらでもない(1名)未記入(3名)
大方好評のようでした。
Q:普段意識して有機農産物を食べていますか?
はい(29名)いいえ(3名)
流石に有機の里の講演会に参加する皆さん9割の方々が有機農産物を意識して食しているとのこと。
Q:具体的によかった点、悪かった点などのご意見をお聞かせ下さい。(抜粋)
先生のお話し全て良かった 頭では判っていても出来なかった理由がわかりました。行動してみる勇気が必要です。大変ありがたかったです 新しい視点を学んだと思います。一つ考え方がステップアップしました。 とても同感する内容でした。こういう考え方がもっと広まり、世界が変化することを望みます 先生のお話しながらの笑顔がとてもやさしく、近くにあったなら患者としてかかりたいと思いました。 土の持つ力のすごさを感じられました。下里に住んでいることを有り難く大切にしていこうと思いました。ありがとうございました。 医農地は命と感じた
概ね、講演の内容に関して好評でした。今後とり上げてほしいテーマなどの提案も多く戴き意味のある講演会になりました。